「GS世代研究会」が発足したのは2011年。
「GS世代」とはゴールデンシクスティーズ、「黄金の60代」という意味です。戦後のベビーブーム世代を中心とするこの世代は、50代までの現役世代が所得の伸び悩みが顕著となる中で、そこそこの資産を形成し、時間を自由に使うことができる「ゆとりが残る唯一の層」といえます。いわゆる「団塊の世代」の人数が多いことはよく知られており、この層を狙ったマーケティングをしなければと、どの業種も口では言うものの、実はあまり熱心に商品開発などをしていたわけではなかったのではないでしょうか。 たしかに「退職金で憧れのエアコンを買う」という人はいないでしょうし、「この年齢になって初めてクルマを購入したい」という人がいるとも思えません。「せめて孫のランドセル消費」という「欲しいものがない世代」といえるでしょう。それではなぜ「GS世代」の消費をあらためて研究するのでしょうか。その最大の理由は、日本の今後の発展のため、だと考えます。これから日本が生き残るためには、他国をリードする付加価値の高い商品やサービスを作っていかなければなりません。これまでも日本商品は品質の良さを最大の売りものにしてきましたが、それはこの国の消費者が世界でもきわめてまれな上質の商品を求め、こまやかな感性をもち、口がうるさかったことと無関係ではないと思います。つまり厳しい消費者がより高度な商品を求める風土が、高品質商品・サービスを育んできたということです。
しかし、今後、日本の消費社会は変質してゆく心配があります。失業率の高まり、非正規雇用の増大、所得の減少・・・・。こうした問題は若い層ほど深刻です。商品の質よりも、とにかく安いことが最大の購買要因、とても贅沢なサービスなどに触れる余裕はない、という人々が多数になれば、当然国内企業の付加価値商品開発に対する熱意も薄れてゆくのではないでしょうか。これでは日本が世界に誇る競争力を失うことにもなりかねません。将来にわたり日本が世界に冠たる高品質な商品・サービスを作り続けるためにも上質顧客の開拓が求められます。「GS世代研究会」活動の理念はまさにここにあります。
そしてもう一つ、なぜ地域活性化が「GS世代研究会」の活動テーマなのでしょうか。「GS世代」の研究は60代に売れる商品開発のためだけではありません。彼らが70代、80代になる本格高齢時代に向けた準備という視点も欠かせません。その高齢化を先取りしているのが、地方経済です。企業が地方自治体と連携し、ビジネスを行いながら住民にどんなベネフィットを与えることができるか実験をすることは、やがて日本全体をフィールドにするビジネスになるでしょうし、さらに言えば高齢先進国日本のビジネスを海外に移転することで世界をリードすることにもつながるはずです。震災後、困難な状況を乗り切るため家族の絆を深めようという動きが顕著となっています。「GS世代」を祖父母とする親子三世代の消費動向からも目が離せません。「GS世代」の研究は、つまるところ日本経済を凝視することに他ならないと考えます。