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近江商人に学ぶ経営  投稿 西村晃

2023年3月 2日

昨年末総合商社の伊藤忠と丸紅が創業150年を迎えたという全面広告が新聞に出た。両社はもともとは同根で、近江の出である。また最近「西武王国の興亡」という本を読了したが、創業家堤家の実家もまた近江だ。ほかにも高島屋、布団で知られる西川、さらには野村証券なども近江に由来がある。また三井や国分などで知られる伊勢松阪商人は、近江出身の蒲生氏郷が松阪の藩主になった時に近江商人を多くこの地に連れてきたことと関係が深いと言われる。近江という土地をあらためて見ると、東海道と北國街道が交わり、また琵琶湖の海運も利用できるいわば情報の交差点という特質がある。ちなみに伊勢松阪もお伊勢参りの参道に当たり全国から参詣に訪れる人が多かったことから情報取集に好都合だった。情報を駆使して商いを栄えさせたところに近江商人の真髄があると言えそうだ。総合商社や証券業の発祥の地ということも、なるほどさもありなん、である。


最近「近江商人 走る!」という映画を観た。堂島の相場情報を山から山に矢倉を組んで手旗信号で60キロ離れた琵琶湖畔まで送り、米相場で儲けたという話は史実に近い。


いま世界は情報戦のさなか、しかもフェイクニュースによる謀略戦が繰り広げられ、銃火を交える戦争とあわせて「ハイブリッド戦争」と言われている。また燃料資源や食料が世界的に不足し、いかに先んじて確保するかも重要な国家戦略である。


毎年元日に掲載される経済新聞の経営者アンケート「景気・株価予想」を熟読保存している。一年後それがどの程度当たっているか見ると、まあ当たっていないことが多い。昨年正月にはほとんどの人が株価3万円を予想していたが見事に外れた。本年も20人中19人が前年の総はずれを知ってかしらずか3万円越えと回答した。一年前の正月には二か月後にウクライナ侵攻があることを予期していなかったのだから「想定外」ということになるのだろう。同様に一年前のアナリストたちもウクライナ侵攻後の資源食糧高騰を予知できず、「想定外」と言っているはずだ。


ウクライナ侵攻が第三次世界大戦になる危険性はかなり高い。また中台武力対決の可能性も否定できない。しかし現在の時点でこうした確率のかなり高いリスクを景気や為替、株価予想に組み込んでいるプロはいないものだ。つまり楽観論で予想をして、確率がゼロではないことが起きると「想定外」と言ってやり過ごすのが世の常ではないか。NATOとロシアが戦火を交えたり、中台武力衝突の可能性は少なからずある。


経営者は、単なる予想屋ではないのだからそれで貿易が止まって会社がつぶれても許してはもらえない。もしそういう有事があれば、日経平均株価は1万円は下がるくらいの大打撃となると私は見ている。そんなことはないと思いたいが、可能性がある以上経営者はそのリスクを頭の片隅に置くべきではないだろうか。


情報を制するもの経済を制す、とは昔からよく言ったものだ。資源をもたない日本はある意味国じゅうが近江商人にならなければいけない時代ということだろう。


多くの情報を集め、その真贋を見極め、少しでもリスクヘッジをしながらかじ取りをしてゆくことが求められる。


もう一つ忘れてならないのが近江商人の教え「三方よし」である。相手から搾取するのではなく、相手にも利を与えれば自分にもそれが返ってきて、やがて社会全体もうまく回るという「三方よし」という考え方は今後ますます重要となる。高齢化、限りある資源、貧富の差の拡大といった今の日本の問題を自分だけよければ構わないという傲慢な経営では乗り切れるものではない。