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★SDGs的「自然園」という名のテーマパーク 投稿

2021年10月 4日

前橋に住むようになって気に入っている場所がある。「赤城自然園」という。正確には前橋市に隣接する渋川市に位置するが、我が家から車で30分ほどの至近の地で赤城山の長いすそ野の一角、約120ヘクタールの敷地内に、マツヤスギなどの雑木林を中心に、東洋一の規模を誇るシャクナゲ園、北関東で生育するほぼ全ての昆虫と触れ合える昆虫園などからなる。
ここはクレディセゾンが運営している。もともとは70年代当時の西武都市開発リゾート開発を目的に取得を開始した土地だ。当時セゾングループ代表だった堤清二氏がデパートの屋上でカブトムシやオタマジャクシを初めて目にする子供たちの姿にショックを受けたことで自然と触れ合う環境・総合自然観察園として運営を決定、88年に西友に管理が移管され、93年に自然園として一部オープンした。しかし年間数億円ともされる運営費に対し開園日は年間で50日程度にとどまったため、入園者は年間6000人程度で常に赤字の状態だった。その後西友がウォルマートの完全子会社となった際に、不良資産として槍玉に上がり、2009年に閉鎖。従業員も全員解雇されるが、一部の社員が無給で管理を継続。一方で新たなスポンサーを探した結果、同じセゾングループだったクレディセゾンが運営を引き継ぐことになり、2010年に再オープンして現在に至っている。旧西友時代に比べ開園日を大幅に増加させ、年間約150日程度の開園とすることで、入園者は年間約5万人にまで増えている。
現在では山野草も子孫をひろげ多くの小鳥や昆虫が飛来している。入場料は大人1000円で、最初は何で森に入るのに入場料がいるのかと思ったが、中に入り散策してみるとその意味が分かって素晴らしいと思うようになった。
まず歩くルートはコンクリートや人工的な柵などはなく、自然を活かした小道がつくられている。案内板がいたるところにあり迷うことなくゆっくり歩くことができる。いくら自然を楽しむといっても道に迷って遭難しては困るがここではその心配はまず考えられない。クマなど動物も生息する山ではあるが、目立たないところにちゃんと柵があり、大型動物の侵入の危険はない。目立たないようなユニフォームで園内を歩きながらパトロールしている従業員がいて、つかず離れずの距離感で見守っているのも分かる。安全で守られたうえで樹木や山野草、昆虫や水生動物に自然のまま接しながら一日楽しむことができる。遊戯施設も売店もないけれど、この環境を保つためには入場料と、セゾン以外の大企業グループの支援があって成り立つという仕組みも納得ができる。過去に赤字を垂れ流す運営状態だったことから入園料収入に頼らず、施設の思想に賛同する企業からの協賛金を大きな収入の柱としているのだ。
一方で、新旧の植物リストづくり、昆虫類の生態データや標本の作成など、基礎的な情報を収集し、長期的な計画目標である「フィールド状況と画像を連動させた利用システムづくり」にもそなえているという。自然とのふれあいを重視しており、敷地内は林の下枝刈りや間引きなどを除いて最小限の開発にとどめている。
まさに持続可能な地球にやさしい「テーマパーク」である。